フィンランド・香港・ドイツ|理学療法士が3カ国で出会った身体ケア文化
音楽ツアーで巡った3カ国で理学療法士が出会った身体ケア文化。
フィンランドのサウナによる自律神経調整、香港の足ツボによる血流改善、ドイツの医療制度における専門職連携。
風土が育んだ「からだの整え方」の違い、まとめました🌳

こんにちは!
リラトレトレーナーの前田です☺️
2025年6月上旬、妻が所属する音楽グループ”Famous Japanese“のツアーに帯同してドイツへ行ってきました🎶
2都市で3公演!
おしゃれな街並みに、おとぎ話から抜け出したような雰囲気。
そして、街のあちこちから音楽が自然と聞こえてくる、そんな空気にどっぷりと浸かった日々でした。
ドイツって音楽の国というイメージがありましたが、
実際に訪れてみると想像以上でした。
街のあちこちに気軽に音楽を楽しめるバーがあったりして、
芸術が生活に根付いてるんだな、と肌で感じました🐶✨

妻たちのグループはグループは何度もワールドツアーをしているのですが、移動は基本現地集合・現地解散。かなり自由なスタイルです。
今回も、メンバーそれぞれがソウル、上海、バンコク、香港、アブダビ……と、
思い思いのルートで旅をしてドイツに集結しました✈️
「こっちの経由チケットが安いよ!」なんて情報をシェアし合いながら、でも一緒には行かない。
この身軽さが、音楽家らしいですよね。

夫婦でヨーロッパを旅するのはこれが二度目。「この機会にもう2〜3カ国寄れるかもね?」と、
妻が地図を見ながら言ったとき、
私の頭に真っ先に浮かんだのがフィンランド🇫🇮でした。
ずっと気になっていた国。いつか行けたらいいなと思って、実はフィンランド語までこっそり勉強していたのです。
ベルリンのついでに、フィンランドのヘルシンキに寄れるんじゃない?
その妻のひとことに、私は食い気味に「行く!」と即答。
まるで条件反射でした🐶💨
こうして経由地はフィンランドに決定です。
さらに、最初のハブである香港では、ずっと気になっていた足ツボマッサージを体験。
最終目的地のドイツでは、街歩きの中で理学療法士の開業施術所に出会い、そこから気づくこともありました。

旅先で気づいた「からだの整え方」いろいろ
旅をしながら、理学療法士しての目で各地のボディケア文化を見てみると、それぞれの国の風土や暮らしに根ざした「からだとの付き合い方」が見えてきたんです。
なんだか当たり前のようだけど、実際に見たり体験したりすると、すごくおもしろくて。
ちょっとだけ、私が見てきた 風土とからだのケア文化 を紹介させてください。

🇫🇮 フィンランド編「自律神経とサウナのいい関係」
ヘルシンキ郊外の、美しい森と湖に囲まれたヌークシオ国立公園を歩いていたときのこと。
奥のほうから楽しそうな声が聞こえてきました。
見ると、サウナ小屋から出てきた人たちが、湯気の立つ体でそのまま湖にドボン!と入っていくところでした。
なんて気持ちよさそうな…🌿

熱いサウナで体を芯まで温め、冷たい湖水でキリッと冷やす。
その姿を見ていて、理学療法士としてのスイッチが入りました。
これは単なるリフレッシュじゃない。
まるで体のスイッチを切り替える「練習」をしているみたい
だな、と。

血行促進・免疫力向上・自律神経の切り替えに◎
■ PTの視点:血管の伸縮と自律神経
寒さが厳しく、夏が短いフィンランドで暮らすには、心と体のバランスを保つことが、きっとすごく大事。
この環境で心身のバランスを保つために、彼らは(無意識のうちに)熱いサウナと冷たい湖の行き来で「自律神経のトレーニング」を行っているのかもしれません。
- サウナ(熱):血管が拡張し、リラックス(副交感神経への刺激もあるが、極限状態では交感神経も働く)
- 冷たい湖(冷):血管が急激に収縮し、交感神経が優位になる
この急激な温度変化による「温冷交代浴」は、血管のポンプ作用を促して血行を促進するだけでなく、交感神経と副交感神経の切り替え(スイッチング)をスムーズにする効果が期待できます☺️

寒さを乗りこえるための生活の知恵
白樺の枝で体を叩く「ヴィヒタ」という文化もあるそうで、皮膚刺激による血行促進そのもの。
厳しい自然環境とうまく付き合い、自然をそのままケアの道具として使う。
そして心身をやさしく整えていく。
フィンランドのサウナは、暮らしの知恵であり、生活に根ざしたセルフケアなんだと、
湖畔の風景の中で妙に納得してしまいました🌲

🇭🇰 香港編「ツボを押して、とにかく流す!」
香港では、旅の合間に足ツボマッサージを体験しました🦶
じっとり肌にまとわりつくような蒸し暑さ…!ただ歩いているだけで、重くなっていく感覚があります。体の中に余分なものが溜まっていくような、そんな感覚になります。
そんな気候の中だからか、「とにかく巡らせて流す!」ことに特化したケアがすっかり根付いている印象でした。

街中には足ツボマッサージの看板があちこちにあって、ふらっと立ち寄れるお店もたくさん。
押されるたびに「うわっ、痛っ!」と声が出そうになるけれど、
終わったあとの足の軽さとスッキリ感が本当にすごい!
そういえば、以前BBCのニュースで見たのですが、香港の人って世界で一番歩くらしいですね。
1日平均2〜3万歩なんてハナシもあるそうで……驚きの運動量です。
これだけ歩けば、当然足はパンパンになります。
だからこそ、疲れを癒やすためのフットマッサージが「特別なご褒美」ではなく「日常のメンテナンス」になっているんでしょうか!
ちなみに香港は世界トップクラスの長寿国だそうです。
よく歩いて、しっかりケアする。これが健康長寿の秘訣のひとつなのかもしれませんね。
室内外の温度差と自律神経
もう一つ、実際に現地で感じたのが強烈な温度差です。
外はサウナのような蒸し暑さなのに、建物の中に入ると冷蔵庫のように冷房がキンキンに効いている。
これには妻も参ってしまったようで、ホテルの部屋で湿気と冷房のダブルパンチを食らい、なんと服を8枚(!)重ね着しても「寒くて寝られない……」と震えていました。
湿気を含んだ冷気って、服を通り越して骨まで響くんですよね。
この激しい寒暖差は、自律神経を簡単に狂わせます。
香港のマッサージには、筋肉の疲れを取るだけでなく、足湯やツボ押しで「乱れた自律神経をリセットする」という役割もあるんだと実感しました。

■ PTの視点:😓(湿気)→ 🦶(ツボ)→ 💨(流す)!
セラピストさんの施術からは、「体の中から悪いものを出し切るぞ!」という気迫を感じました(笑)
- 環境(湿気):湿度が高いと汗が蒸発しにくく、水分が滞留しやすい(むくみの原因)。
- 施術(ツボ・圧):強い圧で末梢の循環を強制的に促す。
- 結果(排出):静脈やリンパの流れを良くして流し切る。

まずは薬湯(足湯)でじっくりと足を温めて血行を良くするところからスタート
理学療法的な視点で見ても、高温多湿な環境下では、末梢(手足)に溜まった静脈血やリンパ液を中枢(心臓)へ押し戻すケアは非常に合理的です。
フィンランドが「神経系のスイッチ」なら、香港は「強圧マッサージで押し戻す → 循環系の排出(ドレナージ)」。
その土地の気候風土と身体のケア方法が、見事にリンクしています💪

押して、流して、デトックス!というスタイルが、文化として定着している。
東洋医学のツボや経絡の考え方と、現代の「疲れを癒したい」ニーズが自然に融合しているのも興味深いですよね。

🇩🇪 ドイツ編「理学療法クリニックのシステムに感動
🏥 理学療法士が「お店」を開いてる⁉
そして、ツアー本番の地、ドイツへ。
ここではマッサージを受けなかったんですが、その代わりに、街を歩いていて職業柄とても面白いものを見つけました。
それは、まちなかで見かける「理学療法(Physiotherapie)」の看板です。

調べてみて、なるほど!
ドイツでは理学療法士は国家資格の独立した専門職で、日本と大きく違うのは個人での開業が可能。
日本の場合:
- 理学療法士は国家資格だが、開業権は明確に認められていない
- 基本的に「医師の指示の下」でのみ施術が可能(独立した医療職としての地位が弱い)
- 病院・クリニック・介護施設などに「雇用される」形が一般的
- 個人で開業しても、法的には「医療行為」として保険請求できない
ドイツの場合:
- 理学療法士(Physiotherapeut)は独立開業が法的に認められている
- 医師の処方箋があれば保険適用で施術できる(独立した医療専門職として法的に保護されている)
- 処方箋なしでも、自費診療として施術が可能
- つまり、街中に「理学療法クリニック」が普通に存在する
いわゆる「リラックス目的のマッサージ」ではなく、
体の不調を治療する医療的なケアとして、制度の中にしっかりと組み込まれているんですね。
整形靴のお店と向かい合ってる!
さらに興味深かったのが、理学療法の施術所のすぐ向かいに、オーダーメイドの整形靴を扱うお店があったこと。
整形外科医、理学療法士、整形靴職人(Orthopädieschuhmacher)などの
専門職同士が自然に連携できる場所にいて、
患者さんの状態に応じて「この人に相談してみて」とつなげられる。
日本のように「医師の指示ありき」という縦の構造じゃなく、ドイツでは専門職同士がフラットに「横で連携」している印象を受けました。

🛠 ケアが生活に組み込まれている
また、ザニテーツハウス(Sanitätshaus)という福祉用具の専門店では、
医師の処方箋があれば義足・装具・整形靴・インソール・歩行器などが保険適用で手に入る仕組みがあります。
これもまた、日本ではあまり見かけないですよね?
からだを治す人、支える道具を作る人。
それぞれのプロがすぐ近くにいて、患者さんを支える。
この合理的かつ機能的なシステムこそ、ドイツらしい「ケアの形」なのかもしれません。
これは本当に面白い発見でした。
どこに行けばいいか迷わないって、実はすごく安心なことですよね。
医師(トップ)
↓(指示)
理学療法士、義肢装具士…
医師 ⇔ 理学療法士 ⇔ 整形靴職人
(それぞれが双方向の矢印で繋がっている三角形のイメージ)
香港みたいに「ちょっと疲れたから寄ってこ!」みたいなマッサージは受けなかったけど、
ケアが日常にあるって、こういうことか…
と感じた滞在でした。

まとめ。旅して見つけた「ボディケア」くらべ
今回の旅の発見を、私なりにまとめてみるとこんな感じかな?
| 国(都市) | 気候・風土 | キーワード | 主な方法 |
| 🇫🇮フィンランド | 長く厳しい冬、寒さ | 整える | 自律神経へのアプローチ(サウナ、湖での温冷浴、ヴィヒタ) |
| 🇭🇰香港 | 高温多湿、蒸し暑さ | 流す・デトックス | 循環・排出へのアプローチ(ツボ押し、推拿(すいな)) |
| 🇩🇪ドイツ | 合理的な国民性・制度 | メンテナンス | 構造・機能へのアプローチ(理学療法、整形靴、 福祉用具) |
今回の旅では、音楽だけじゃなくて、その土地の人たちがどうやってからだと付き合っているのかを、ちょっとだけ覗かせてもらえた気がしました。
風土が違えば、暮らし方も、身体の整え方も違う。
でも、どの国もちゃんと「その土地の理にかなった方法」を選んでいるのが興味深かったです。
理学療法士として、また一つ視野が広がった気がします。
次の旅では、どんなケア文化に出会えるか楽しみです☺️